交通事故弁護ブログ@金沢LO

交通事故に関する法律問題を解説します。@石川県金沢市香林坊の若手弁護士

自賠責の後遺障害等級と労働能力喪失率、裁判ではどう扱われるか?

労働能力喪失率とは?

後遺障害(後遺症)の逸失利益を請求する場合、鍵となる要素は、「基礎収入」、「労働能力喪失率」、「労働能力喪失期間」です。

要するに、後遺障害が残存していることで、「もともとどれだけの収入が見込めていた人」が「どれだけの率で労働能力を失った」か。そして、「それが何年間続くか」ということです。

労働能力喪失率は、自賠責保険において、等級に応じて定められています。

以下のサイトにまとめられています。

後遺障害別等級表・労働能力喪失率

 

自賠責保険における考え方と裁判における考え方の違い

自賠責保険の後遺障害認定は、労災の制度に準ずるとされているのですが、労災では、労働能力について、一般的な労働能力をいうものとされており、個別の職業能力的諸条件を考慮していません。そのため、等級すなわち定率の労働能力喪失率となります。

しかし、不法行為による損害賠償は、被害者に具体的に生じた不利益を補填し、不法行為がなかったときの状態まで回復させることを目的とします。そのため、裁判においては、自賠責保険の後遺障害等級を参考にしますが、個々の職業能力的諸条件を具体的に検討した上で判断されます。

そのため、裁判で自賠責の労働能力喪失率が認められないことが少なくありません。特に、実際の労働形態への影響がごく小さい場合や減収が認められない場合には、認定される労働能力喪失率が自賠責の規定を下回ってくることがよくあるといえます。

弁護士であっても、「自賠責保険が最低補償を目的としている」という固定観念で臨みやすいのですが、注意すべき点です。

逆に、職業などとの兼ね合いで、自賠責によるものを大きく超える労働能力喪失率が認められた判決例も存在します(たとえば、60歳女子ダンス教室インストラクターの自賠責併合14級認定後遺障害逸失利益について、具体的不利益から労働能力喪失率50%を認めた札幌地裁平成27年2月27日判決(自保ジャーナル1945号46頁)など)。

訴訟提起の場合には、自賠責等級の労働能力喪失率を当然認められるものと考えず、丁寧に主張立証していくべきだといえます

 

労働能力喪失期間の問題もある

後遺障害の逸失利益の関係では、労働能力喪失期間の問題も非常に大きなポイントです。

永続する後遺障害だとすれば、一般的には労働能力喪失期間の終期は67歳として計算されています(現在の世の中でそれが妥当かどうかの問題はありそうですが)。

しかし、労働能力喪失期間を10年、5年、3年等に制限する判決例もあります。特に多いのは、むち打ち症で12級や14級という場合です。裁判に至らないまでも、加害者側保険会社が労働能力喪失期間を2~5年程度として提案してくることも多いように思います。

労働能力喪失期間の問題については、今後また取り上げてみたいと思います。

 

金沢法律事務所 弁護士 山岸陽平

自動車保険の弁護士費用特約は、どんなときに使ったほうがいい?

自動車保険の弁護士費用特約、入っていますか?

自動車保険の弁護士費用特約は、被害者にかかる弁護士費用を保険会社が補償するしくみです。

近年では、自動車保険に入る人の半分程度は、弁護士費用特約を付帯させているということです。

ちなみに、弁護士でも、弁護士費用特約をつけている人は多いと思います。それだけ加入するメリットのある特約だろうと思います。

自動車保険の弁護士費用特約のメリット・デメリットについて、簡単にまとめてみることにします。

弁護士費用特約を使って法律相談しても、自動車保険の等級はダウンしません

自動車保険の賠償保険を使って相手方に賠償金を支払ったり、車両保険を使って自分の車両を修理したりすると、基本的に翌年の等級が3等級ダウンします(数字が増えます)。たとえば、下の保険会社のサイトをご覧ください。

www.ins-saison.co.jp

 

この等級ダウンを嫌って、事故に遭った際にも保険を使わずに対処される方は多いです。賠償金や修理代の補償を受けられても、それ以上に先々の保険料の支払いが多くなってしまうことがあるからです。

しかし、弁護士費用特約を使うだけでは、自動車保険の等級はダウンしません

そのため、たとえば、「相手方保険会社が提案してきている賠償金額が適正なのか」を見てもらうために弁護士に相談したい、というときには、等級ダウンや保険料アップを心配せずに弁護士に相談できます。

弁護士費用特約を使って賠償請求を弁護士に依頼する場合の自動車保険の等級は?

相談だけではなく、特約を使って弁護士を代理人に立てても、自動車保険の等級はダウンしません

ただし、弁護士特約とは関係なく、ご自分の側に過失が認められるような場合には相手方への賠償金支払いのために等級ダウン事故扱いを取らざるをえないことがあるでしょう。また、相手方が無保険であり資力がない場合には、裁判で勝訴しても回収ができず、ご自分の車両保険を使うことになり、結果として等級ダウンにならざるを得ないことがあります。

また、弁護士費用特約では、相手方から訴えられた場合を適用対象としていないことが多いので、訴えられた場合の弁護士費用をどうするかについては、依頼先の弁護士やご加入の保険会社と話し合うことが必要になります。

弁護士への相談、依頼が有用なケース

事故による症状が長く残存し、後遺障害が認定される可能性のあるケースでは、弁護士に依頼することで増額する可能性や増額幅が大きくなります。

他方、身体的なダメージが小さく、物損だけの問題であれば、弁護士に依頼しても大きな金額の増加は見込みにくいところです。ただ、金額の小さい話であっても、交渉や訴訟を代行してもらえるというメリットはあると思います。

デメリットは、相手方との交渉・訴訟が長くなることもあること?

すでにご説明のとおり、弁護士費用特約は、利用しても等級ダウン扱いにはなりませんので、金銭的なデメリットはあまり見当たりません。

被害者(ご依頼者)の方がお感じになる精神的なデメリットとしては、相手方との交渉・訴訟が長期化する場合がある、ということがあります。しかし、一旦弁護士に交渉や訴訟を依頼すれば、保険会社と逐一話をしたり、裁判所に毎回出廷するという必要はありませんので、細かくて面倒な状態が続くというわけではありません

弁護士に依頼することにより、賠償金や慰謝料の増額を得られることも多く、被害が大きければ大きいほど、その差額が大きくなることが多いので、面倒という理由で諦めるのはもったいないことだと思います。

同居家族、別居親の自動車保険の特約を利用できる場合も

自動車保険契約は、ご家族までカバーすることが多いものです。弁護士費用特約も、同居家族や別居親の利用を認めていることが多くあります。

弁護士費用特約を利用できれば、弁護士に相談・依頼することで、被害者案件を有利に解決しやすくなりますので、ご家族が交通事故に遭われた際には、ご家族加入の自動車保険をチェックし、わからないことがあれば保険会社に問い合わせるようにしましょう。

保険会社には、相談の前に、相談先の弁護士名を伝えましょう。

 

金沢法律事務所 弁護士 山岸陽平