交通事故弁護ブログ@金沢LO

交通事故に関する法律問題を解説します。@石川県金沢市香林坊の若手弁護士

少額の交通事故訴訟が急増しているのはなぜか

簡易裁判所で急増する交通事故訴訟

以前、読売新聞が、「交通事故訴訟 10年で5倍」「弁護士保険普及で」「『弁護士、報酬が目的』」「支払い増、損保悲鳴」という記事を掲載したことがあります(2014年10月25日朝刊)。

九州の弁護士の方がその記事に言及しておられるのでリンクします。

jiko110.jp

簡易裁判所は、基本的に請求額140万円以下の訴訟を取り扱うのですが、そこに訴え出る訴訟が急増しているということです。

また、以前は、そのような場合には弁護士をつけない者同士の争いも多かったものが、最近は多くの場合で弁護士を代理人に立てているということです。

この記事は保険会社の言い分中心に構成されていますので、上記のリンクでの弁護士の意見と読み合わせるとちょうど良さそうに思います。

 

物損のみ案件の現状と私の考え

物損のみの案件は訴えるメリットがあまりないことが多い

物損のみの案件は、人損(ケガや後遺障害)が関係する案件に比べると、訴えるメリットは少ないことが多いです。

それは、物損のみの案件では慰謝料が発生しないことと関係します。

過失割合や車両価値の問題が争われることが多いですが、慰謝料や後遺障害逸失利益のように保険会社基準より高い裁判基準があるわけではなく、結局双方の車両損害をどう分け合って補填するかというだけの話になります。

訴訟になれば、時間がかかる場合も多いです。

ですから、あまりメリットがありません。

特に、弁護士費用特約が普及するまでは、メリットが少ないのに弁護士に依頼すると弁護士費用を負担しなければならなかったわけです。要するに、数万・数十万のお金を巡って争っている事故当事者が弁護士にお金を支払うことは不経済だったわけです。弁護士から見ても、費用倒れになる可能性が大の場合は引き受けにくい状況でした。

この点が大きなネックになって、被害者は、提案された解決内容に不満があっても、しぶしぶ受諾していたものとみられます。

それでも訴訟で解決すべき場合はあるか

新聞記事によると、弁護士費用特約ができて、物損のみのケースで弁護士に依頼するケースが急増したことを保険会社は問題視しているようです。

上述したように、物損のみの事故は訴訟にメリットが少ないため、これまでなら保険会社からの説得で「合理的な泣き寝入り」で済ませることができていたものが、弁護士費用特約の導入により、そうはいかないことが増えてきたという現実があります。

この「合理的な泣き寝入り」を是と捉えるか、否と捉えるかがポイントなのだろうと思います。

上述したようにメリットが少ない中でも、納得のいかない案を呑むデメリットを回避するための訴訟というのは、あってもよいのではないかと思います。

雑感

以前、弁護士費用特約を利用した受任についての説明書に、「タイムチャージ方式は物損の少額案件を受任しやすくするために設定されている」と書かれていたので、素直に従ってタイムチャージ方式で受任したことがあったのですが、そこまで受任しやすいとは感じませんでした。弁護士であっても保険会社とのやり取りが負担になることがあります。

そんな感じで、タイムチャージ方式は使いやすいとも言えないので、現在(今日時点)、タイムチャージ方式で受任している案件はなく、今後どうしようかと思案しています。しかし、基本的には、被害者が弁護士特約を使って訴訟をしようと考えているときに、弁護士までもそれを押しとどめるのはおかしいのではないかとも思いますので、方式はともかく受任の努力はしたいところです。

なお、保険会社におかれては、”不毛な”訴訟を少なくするために、ドライブレコーダーの普及をさらに図るとか、安全運転評価型自動車保険http://www.sonysonpo.co.jp/auto/cashback/など)の開発普及を進めるなどの取組を進めてほしいと思っています。