自動車保険の弁護士費用特約、入っていますか?
自動車保険の弁護士費用特約は、被害者にかかる弁護士費用を保険会社が補償するしくみです。
近年では、自動車保険に入る人の半分程度は、弁護士費用特約を付帯させているということです。
ちなみに、弁護士でも、弁護士費用特約をつけている人は多いと思います。それだけ加入するメリットのある特約だろうと思います。
自動車保険の弁護士費用特約のメリット・デメリットについて、簡単にまとめてみることにします。
弁護士費用特約を使って法律相談しても、自動車保険の等級はダウンしません
自動車保険の賠償保険を使って相手方に賠償金を支払ったり、車両保険を使って自分の車両を修理したりすると、基本的に翌年の等級が3等級ダウンします(数字が増えます)。たとえば、下の保険会社のサイトをご覧ください。
この等級ダウンを嫌って、事故に遭った際にも保険を使わずに対処される方は多いです。賠償金や修理代の補償を受けられても、それ以上に先々の保険料の支払いが多くなってしまうことがあるからです。
しかし、弁護士費用特約を使うだけでは、自動車保険の等級はダウンしません。
そのため、たとえば、「相手方保険会社が提案してきている賠償金額が適正なのか」を見てもらうために弁護士に相談したい、というときには、等級ダウンや保険料アップを心配せずに弁護士に相談できます。
弁護士費用特約を使って賠償請求を弁護士に依頼する場合の自動車保険の等級は?
相談だけではなく、特約を使って弁護士を代理人に立てても、自動車保険の等級はダウンしません。
ただし、弁護士特約とは関係なく、ご自分の側に過失が認められるような場合には相手方への賠償金支払いのために等級ダウン事故扱いを取らざるをえないことがあるでしょう。また、相手方が無保険であり資力がない場合には、裁判で勝訴しても回収ができず、ご自分の車両保険を使うことになり、結果として等級ダウンにならざるを得ないことがあります。
また、弁護士費用特約では、相手方から訴えられた場合を適用対象としていないことが多いので、訴えられた場合の弁護士費用をどうするかについては、依頼先の弁護士やご加入の保険会社と話し合うことが必要になります。
弁護士への相談、依頼が有用なケース
事故による症状が長く残存し、後遺障害が認定される可能性のあるケースでは、弁護士に依頼することで増額する可能性や増額幅が大きくなります。
他方、身体的なダメージが小さく、物損だけの問題であれば、弁護士に依頼しても大きな金額の増加は見込みにくいところです。ただ、金額の小さい話であっても、交渉や訴訟を代行してもらえるというメリットはあると思います。
デメリットは、相手方との交渉・訴訟が長くなることもあること?
すでにご説明のとおり、弁護士費用特約は、利用しても等級ダウン扱いにはなりませんので、金銭的なデメリットはあまり見当たりません。
被害者(ご依頼者)の方がお感じになる精神的なデメリットとしては、相手方との交渉・訴訟が長期化する場合がある、ということがあります。しかし、一旦弁護士に交渉や訴訟を依頼すれば、保険会社と逐一話をしたり、裁判所に毎回出廷するという必要はありませんので、細かくて面倒な状態が続くというわけではありません。
弁護士に依頼することにより、賠償金や慰謝料の増額を得られることも多く、被害が大きければ大きいほど、その差額が大きくなることが多いので、面倒という理由で諦めるのはもったいないことだと思います。
同居家族、別居親の自動車保険の特約を利用できる場合も
自動車保険契約は、ご家族までカバーすることが多いものです。弁護士費用特約も、同居家族や別居親の利用を認めていることが多くあります。
弁護士費用特約を利用できれば、弁護士に相談・依頼することで、被害者案件を有利に解決しやすくなりますので、ご家族が交通事故に遭われた際には、ご家族加入の自動車保険をチェックし、わからないことがあれば保険会社に問い合わせるようにしましょう。
保険会社には、相談の前に、相談先の弁護士名を伝えましょう。
金沢法律事務所 弁護士 山岸陽平