被害者本人に対する慰謝料以外に、被害者の近親者に慰謝料は認められるか?
被害者の近親者の慰謝料が認められることがあるか?
答えは、YESです。しかし、認められる場合は限られます。
死亡慰謝料では、被害者の近親者の慰謝料は認められる
死亡慰謝料について、赤い本(日弁連交通事故相談センター東京支部発行)は、目安となる金額を示した上、「本基準は、死亡慰謝料の総額であり、民法711条所定の者とそれに準ずる者の分も含まれている」としています。
本来、理屈上は、被害者本人が有する慰謝料を相続するという法形式を取り、それとは別に個々の近親者が各自で慰謝料を取得できるはずです。しかし、赤い本の考え方は、相続構成で一本化されているといえます。
もっとも、赤い本も、具体的な斟酌事由により増減されるべきもので、一応の目安であると言っていますので、具体的ケースに応じて、近親者のうちで極端な不利益を受ける人がないように調整される、ともいえます。
後遺障害慰謝料では、被害者の近親者の慰謝料は、限られた場合に認められる
後遺障害慰謝料では、裁判例の傾向では、近親者が死亡に比肩するような重大な精神的苦痛を受けた場合に限り被害者の近親者の慰謝料が認められる、といえます。
自賠責における後遺障害の等級が1、2級であるとか、高次脳機能障害が関係するなどして被害者の身の回りのケアなどについて家族の負担が非常に重くなるようなケースについては、被害者の近親者の慰謝料が認められる傾向にあります。
ただ、介護負担の費用として認められるものではないので、金額は本人分の1~2割程度にとどまることが多いようです。
傷害慰謝料では、被害者の近親者の慰謝料は、原則認められない
傷害慰謝料については、事情に応じ、被害者本人分の慰謝料が増額されることはありますが、被害者近親者の慰謝料として別立てで認められることは、まずないといえます。
被害者の近親者の実際の苦労は多大なものがありますが、裁判では相当程度定型化した判断になりやすいところがあります。それでも、弁護士が要諦を踏まえた代理人活動をすることで、被害者近親者の声が裁判所に伝わり、慰謝料認容額の増額につながるという面はあるでしょう。
金沢法律事務所 弁護士 山岸陽平