訴訟を提起し、判決になれば、弁護士費用が認められる
一般的に、交通事故(不法行為)による損害賠償請求において、裁判所は、弁護士費用について、請求認容額の10%程度を事故と相当因果関係のある損害として認めています。
つまり、実際に被害者が受任弁護士に弁護士費用をいくら支払ったか・支払うかにかかわらず、裁判所が認容した金額(他の被害額)に応じて、損害としての弁護士費用額が定まってくるということになります。→そのため、被害者が契約に基づいて受任弁護士に実際に支払う弁護士費用とは違いが出てくる可能性があるということになります。
なお、被害者が自動車保険の弁護士費用特約を利用した場合には、被害者に実質的な弁護士費用の負担がないことも多いことから、弁護士費用を損害として認めるかどうかについては議論のあるところです。しかし、弁護士費用相当額を損害として認めた判決例が存在します(京都地裁平成24年1月27日判決(交民45巻1号85頁)など)。
訴訟を提起し、判決になれば、遅延損害金が認められる
訴訟が長引くと、被害者が交通事故のときに受けた損害は、遅れて支払われることになります。ただ、判決(認容判決)になれば、損害賠償金そのもの以外に、遅延損害金も認められることになります。
交通事故による損害賠償訴訟の場合には、遅延損害金は、事故日から起算して年5%(民事法定利率)となります。
※民事法定利率については、今後の民法改正により、変更が生じる可能性があります。
なお、遅延損害金は、支払われるまでが「遅延」ですので、一審判決後に一方が控訴するなどして支払いがさらに遅れた場合には、その期間についても遅延損害金が発生することになります。
訴訟を提起しなければ、弁護士費用や遅延損害金は損害として認められないのか?
訴訟を提起せずに交渉で解決する場合には、弁護士費用や遅延損害金を損害項目に計上することは少ないといえます。
計上してはならない、というわけではありませんが、計上を強制するルールはありません。ですので、計上しないことが基本です。
そのため、特に、被害者において「相手が加害者なのだから弁護士費用は相手が支払うべきだ」というご意見が強いと、交渉での解決が困難になる場合が多いです。
損害賠償請求のための弁護士費用で苦しまないためにも、自動車保険の弁護士費用特約は有用だといえます。
訴訟で、判決までに和解した場合にはどうなるか?
判決までに和解する場合には、和解が成立するまでの成り行きは様々ですので一概には言えません。
ただ、私や他の弁護士の経験を参考にして言うと、たとえば、裁判所が和解案を提示する場合、弁護士費用や遅延損害金は損害項目として示さないことが多いように思われます。弁護士費用や遅延損害金は、あくまで、判決になったときに出てくる項目、という印象です。
しかし、その代わり、「調整金」という名目で、解決金額の上乗せが図られることもありますので、必ずしも和解だからといって弁護士費用や遅延損害金の分がそのまま被害者に不利になるというわけではありません。
金沢法律事務所 弁護士 山岸陽平